先日のアブラム・カーンとイスラエル・ガルバンのTOROBAKA、Sadler's Wellsが素晴らしいドキュメンタリーを公開しています。公演が終了したので、トップのHPからはリンクに辿り着けなくなったので、こちらに直リンクを残しておきます。(高画質のリハーサルドキュメンタリーのイントロ部分数秒です。このページからロンドン編、バルセロナ編、グルノーブル編へと繋がります)
http://www.torobaka.com/#Intro
http://www.torobaka.com/#Intro
スペインのフラメンコ界のアバンガード、イスラエル・ガルバンの事を、DリンチとSキューブリックの脳を持つ男と表現するアブラム・カーンは、インドの古典舞踏カタックをベースに独特のスタイルを造り上げた舞踏家。サタジット・レイやWベンダース,Tマリックなどの映画監督の映し出す世界を体現するダンサーとも称されています。(映画に興味がある方ならそれがどういう意味合いの世界なのかきっとピンとくるはず)
このふたりの共演のTOROBAKAは、全てスペイン語で構成され、素晴らしいミュージシャン達のカンテ(歌声)、トケ(アコギ)、バリージョ(カスタネット)、ハレオ(掛け声)、パルマ(手拍子)そしてサバテアード(床を踏み鳴らす踊り)ものすごい迫力で繰り広げられます。(これがなぜだか、和楽を思い起こさせるところがあります。歌舞伎や文楽などのあの独特の間合い、掛け合いです)
スペイン語でTORO(bull=荒々しい雄牛) +Vaca(cow=大人しい飼牛) の意味をもつこのタイトルには <牛という動物を象徴するふたつの異なる文化>スペインでは勇敢な闘牛として、インドではシヴァ伸の神聖な乗りものとして。この異文化=アブラムとイスラエルという、それぞれに異なる伝統舞踏の世界に生まれた時からどっぷりというベースを持ち、その伝統を卓越したコンテンポラリーダンサーカリスマ代表格のふたりの共演作品。二つの伝統(two traditions)を統合(but unite)し、そして壊す(profaned)という ダダイズム的な意味合いが含まれています。
アブラムが初めてイスラエルを訪れたとき、”私と一緒に踊るのであれば君をナイフで一撃する、私にとって舞踏とはマタドールと闘牛の世界であるから” と言ったという逸話があり、これもステージを見ていると頷けます。どちらがToroとでどちらがVacaなのか、まるで陰陽のエネルギーが大きくうねっていくような力強さと緊迫感と人間くささと神々しさです。
今回のスタッフの一覧にコスチュームデザイナーとして野村萬斎の”藪の中”など衣装デザインを担当した中野きみえさんという方の名前がありました。(衣装も素敵でした)
それぞれに来日も果たしており、また、このクオリティの高さで、来日の勧誘があっても不思議ではないと、とにかく、これで打ち切りとは残念すぎます。再公演を強く望みます。
http://www.thespace.org/artwork/view/torobaka